布哇(ハワイ)マウイ島ラハイナの浄土院の原源照ご住職から、お手紙を頂戴した。写真家でハワイを取材した岩根愛さんの写真が、京都国際写真展で公開されているので、ぜひ観に行って欲しいとの内容であった。
「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は、そのHPによると、
世界屈指の文化都市・京都を舞台に開催される、日本でも
数少ない国際的な写真祭です。一千年の長きにわたって伝統
を守りながら、その一方で先端文化の発信地でもあり続けて
きた京都。その京都がもっとも美しいといわれる春に開催さ
れます。
日本および海外の重要作品や貴重な写真コレクションを、
趣のある歴史的建造物やモダンな近現代建築の空間に展開
し、ときに伝統工芸職人や最先端テクノロジーとのコラボレ
ーションも実現するなど、京都ならではの特徴ある写真祭を
目指します。
「現代日本女性写真家たちの祝祭」展として、岩根さんが参加展示されておりました。2006年以降、ハワイにおける日系文化に注視し、2013年より福島県三春町にも拠点を構え、移民を通じたハワイと福島の関連をテーマに制作を続ける(ウィキペディアより)とのことです。
ハワイにおける移民は、サトウキビ畑や製糖工場労働者を確保するために始められ、1868年から日本からの移民が開始され150年になる。その歴史は決して平坦なものではなく、日本人と日系人のハワイでの人口が3割を超えると、いわゆる排日運動に翻弄される。そして太平洋戦争の勃発によって、日本人・日系人はアメリカ人として戦時を生きることを求められて、拘束・抑留そして動員の歴史となった。
そうしたなかで、亡くなっていった多くの人々のお墓が現存し、ハワイ島では噴火による溶岩で埋もれていくお墓に「魂はここに眠っているのだから」と、縁故者ではないがお参りし続ける日系の人、海岸の砂地の墓石はおおかた倒れかかっているのだが、無縁墓地を守り続ける現地の僧侶たち、そうした現実に焦点を当てた写真群であった。
ハワイの写真の隣には常に彼女がフィールドワークとする福島にて震災で亡くなった人たちのお墓が映し出されている。両者には100年以上の隔たりがあるが、重なってくる思いがある。
人間は時代の中で喜び悲しみ、時には翻弄され、時には絶望さへ感じ、時には不慮の災害にのみ込まれながら生きているのである。そしてそこには必ず弔う人がいることに救いを感じさせられた。
そんな思いを抱きながら、鑑賞させていただいた。わたしの文章では、布哇移民のことそして作者の思うところを、ほとんど伝えることができない。スマホには岩根さんの写された作品があるが、無論転載できるものではない。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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