9月8日、海福寺第二十五世廣運上人の満中陰(四十九日)の前日、表葬儀をお勤めさせていただきました。台風13号が接近するなか、不思議なことに海福寺は雨風なく、穏やかに儀式をすることができました。
その会葬者の中に、中野さんという男性の方がご参列くださいました。この方は、今年3月に海福寺で行われた五重相伝会(ごじゅうそうでんえ)をお受けになってくださいました。五重相伝会とは、五日間、檀家さんがお寺に通って法話を聞いたり、お経をおとなえし、お念仏をおとなえする大切さを体験する行事です。
そんな中野さんが、住職の御霊前に、手作りのお数珠を奉納してくださいました。手作りのお数珠を手がけてくださった理由を、メールにて教えてくださいました。
〈中野さんメール内容〉
父(※中野さんのお父さま)の葬儀の頃から(十年くらい
前)、住職さんの体調が悪いと見て感じました。五重前くら
いに足を切断したと聞き、浄土宗のしきたりやルールでは良
くないかもしれませんが、五重の後から住職さんの身の
「苦」が少しでも阿弥陀さまの御力で減ればいいなと、庭の
柿と梅で少しずつ球を削り、数珠にしました。浄名には阿弥
陀さまのキリークが入った水晶、弟子玉の紐は色んな現世の
色をイメージして白と灰色のボンボンは煩悩が薄れていくイ
メージです。本当はもっと早く完成させたかったのですが、
完成した時にはお知らせを受けた後でした。念仏を念じなが
ら作ったのですが、間に合わなかった・・・。申し訳ない気
持ちしかありませんが、なんとか住職さんと阿弥陀さまに届
けたいと、ずっと思っていました。
このような想いで、お数珠を作ってくださったと教えてくださいました。頂いた二連のお数珠は、一つ一つ丁寧に手間暇かけて作られたことが、手に取ってすぐにわかりました。南無阿弥陀仏とおとなえしながら手がけてくださった念珠は、まるで、住職の心身の苦しみを吸い取ったかのような印象を受けました。
浄土宗の宗義では、身体の病を治すための念仏ではない。確かにそうかもしれませんが、阿弥陀さまは、中野さんの想いを受け取って、住職の苦しみ和らげてくれたと思います。何よりも住職の苦しみが少しでも除かれるようにと、念じてくださる檀信徒の方々の心が、本当に有り難く心が温かくなりました。
よく見れば 親を送りし 人ばかり (自作)
会葬者の皆さまを拝見いたしますと、すでにご家族を送られた方が多く見受けられました。中野さんも先にお父さまをお送りされた方です。そのご経験から、私たち家族の心情を慮ってくださったのでありましょう。
浄土宗のお数珠は、お念仏、南無阿弥陀仏を常におとなえし続けていくために使う道具です。よって、必ずしも数が大切なのではないのですが、毎日100遍となえよう。200遍以上となえようという習慣が、自ずと多念になり、念仏相続となります。
また私たちが再会を果たすことができる場所は、阿弥陀さまの構えられた西方極楽浄土しかないと、信を深めた「念仏の聲が納まった手作りの日課数珠」のご奉納でありました。
海福寺 瀧 沢 行 彦
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