今年も余すところ残り僅かとなり、カレンダーも来年の予定を記入するような時期になりましたが、考えてみますと私たちの人生の暦は、いつ終わりを告げるかわかりません。今年は、一世を風靡した音楽家の方々が相次いで旅立たれました。
その中に、映画スラムダンクのオープニングを担当した元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTでThe Birthdayのボーカル・チバユウスケさんがいました。そのチバさんの訃報に際し、The Birthdayでベースを担当したヒライハルキさんが、「日々生きている事が当たり前ではないことを痛感する毎日でした」と言葉を残されました。
皆さんご存じの通り仏教では、この世を諸行無常と説きます。この世のすべては移ろい変わり、留まることはなく、壊れないものはないということであります。この無常という道理は、悲観的な印象がありますが、見方を変えれば「有限な命であるからこそ、一日一日を大切に過ごしましょう」という教訓ともなります。
では、皆さんは「一日一日を大切に過ごそう」と決意したとして、どのような生活をしていこうとお考えになりますか?
世間の物価高の中で、給料は上がらず、一日一日を大切に生きるというより、一日一日を必死で生きていくという表現の方が適しているような時代でありましょう。
先日8歳になる息子と今年7月に極楽浄土へ往生した師僧(私の父)のお墓参りをしました。すると私にこう言いました。
「お父さん、夕焼けが綺麗だね。きっと、おじいちゃんが綺麗な夕日を見せてくれたんだよ。」
と、声をかけてくれました。亡き家族と仏さまを通じて繋がっていることを感じる温かい言葉でした。
あるとき、お釈迦さまが弟子の舎利弗さまに「この無常の世界から西に十万億土の佛の世界を過ぎた先に世界があるのですよ。その名を極楽浄土と言います。その場所には佛がおります。名を、阿弥陀如来といいます。現在も極楽浄土から法を説いてくださっているのですよ」と仰せになりました。
肉眼で見るものだけしか信じることができない人の世でありますが、淀みなき子供の心には、夕陽がお浄土と繋がっていると観えるのでしょう。自宅へ帰ると、おじいちゃんの位牌の前で「なーむあーみだーぶ。なーむあーみだーぶ。」と声に出して手を合わせていました。
皆さんは、ご家族とどのように死生観をお話していますか?
一日を 一生と暮しなば その日その日が 尊かりける
皆さんは、この世限りの暦をめくりますか?それとも、後の世、必死で生き抜いた先にある極楽浄土への暦をめくりますか?当たり前ではない毎日を大切に過ごしたいですね。
海福寺 瀧 沢 行 彦
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