重箱読み(じゅうばこよみ)をご存じであろうか。漢字の読み方には、音読みと訓読みがあることは、ご承知と思います。日本漢字能力検定協会によると、つぎの説明があります。
漢字には「音読み」と「訓読み」という2通りの読み方があり、
おおざっぱに言うと、中国から入ってきた発音をもとにする
ものが「音読み」で、もともと日本にあった言葉に漢字をあて
た読み方が「訓読み」なんだ。熟語には、音と音、訓と訓の組
み合わせ以外に、上が音で下が訓、上が訓で下が音で読む熟
語もあるよ。それぞれ代表的な熟語を使って、「重箱じゅうば
こ読み」「湯桶ゆとう読み」と言うんだ。区別するには、音と
訓をしっかり覚えるしかないから、がんばろうね!
漢字は中国から入ってきたので、「重」」の字を「じゅう」と、中国読みしても意味が分からない。そこで「重」の字の意味を踏まえて、我が国では「重い(おもい)」と読むようになったのである。こうしてひとつの漢字に「音読み」「訓読み」が共存することになった。
ただ本来の「重」という字には、「おもい」という意味ばかりでなく、「重厚(じゅうこう)」や「慎重(しんちょう)」などに見られるように、「おもおもしい、おちついている」という意味から、「おもんずる」の訓読みが生じた。さらには「かさねる」の意味から、「八重桜」など「え」という読みも加わっている。
そればかりか、名前のなどでは「しげ」と読み、「重樹(しげき)」という人も多いように思う。
よって「重」の字は、以下の読み方が存在することとなる。
音読み ジュウ・チョウ
訓読み え・おもい・かさねる・かさなる
人名訓 あつ・あつし・いかし・おもし・かさぬ・かず・
かたし・しげ・しげし・しげる・のぶ・ふさ
さて、「重箱」であるが、「重」は音読みであり、「箱」は訓読みである。一般的には熟語は、前が音読みであれば、後も音読みというのが普通である。したがって「音」+「訓」となる読み方は、「重箱読み」と言われるわけである。辞書から例を挙げると、「団子」「王手」「本物」「王様」「派手」「福袋」「台所」「本屋」など、719例(註1)があるという。漢字全体からすると僅かである。
「訓」+「音」の湯桶読みは、「一晩ひとバン」「雨具あまグ」「横線よこセン」「下絵したエ」「鰻重うなジュウ」「掛軸かけジク」「株価かぶカ」「株式かぶシキ」「見本みホン」「結納ゆいノウ」「朝晩」など、774例あるという。
お檀家さんの名前にもいくつか見ることができるが、本人を特定できてしまうのでここでは紹介しない。
代わりというわけではないが、2023年に生まれた子供の名前(10位)を調べると、特に男子は一字の名前が多い(註2)。
【男子】
1 蓮れん 2 碧あお 3 陽翔はると 4 湊みなと
5 蒼あおい 6 朝陽あさひ 7 凪なぎ 8 湊斗みなと
9 暖だん 10 律りつ
【女子】
1 陽葵ひまり 2 凛りん 3 翠すい 4 紬つむぎ
5 結菜ゆいな 6 陽菜ひな 7 芽依めい 8 葵あおい
9 結愛ゆあ 10 莉子りこ
まず男子で「陽翔」であるが、「陽」の字の音読みは「ヨウ」、訓読みは「ひ、ひなた、いつわる」であって、「はる」という読みはない。「翔」の字の読みは、音読みは「ショウ」、訓読みは「かける、とぶ」であって、「と」という読みはない。女子の「陽葵ひまり」であるが、「陽」の訓読みに「ひ」あり、「葵」も訓読みで問題がないが読めないことである。
結論づけると、現在の子供の名は、「音」+「音」、「訓」+「訓」、「重箱読み」、「湯桶読み」などという伝統?にはしたがっていないである。いわゆるキラキラネームよることが多いのである。
さぞかし、学校の先生は苦労されていることであろうか。
【註1】円満字二郎HP
【註2】Benesse たまぴよ 2023年赤ちゃんの名前ランキングによる。
【キラキラネーム】キラキラネームあるいはDQNネーム(ドキュンネーム)は、伝統的でない当て字、外国人名、創作物の登場人物名などを用いた奇抜な名前の総称。
1990年代半ば以降から増加し、2000年代前半〜2010年代前半に全盛期を迎えた。命名は親の責任であるためにその者の親の自己満足・教養の無さが露呈する名付けと言われ、2000年代にはインターネットスラングとしてDQNネームと呼れてきたが、2010年代以降にマスメディアでは批判的な意味を薄めた「キラキラネーム」が新たに造語され、以降のマスメディアではほぼ統一利用されている。(ウィキペディア)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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